【8/31〜の週】ISM+NFPで9月利上げは決まるか、通貨別まとめ
先週金曜、ジャクソンホールでウォーシュFRB議長が「インフレは意味のある形では鈍っていない」と述べた瞬間、市場の前提がひっくり返りました。9月FOMCの利上げ確率は講演前の36%から56〜57%へ一気に跳ね上がり(Kitco・Barchart)、ドルは2週間ぶりの高値、ゴールドは週間3.5%安。「いつ利下げするか」を数えていた相場が、「いつ利上げするか」を数える相場に変わりました。
その答え合わせが今週まとめてやってきます。火曜のISM製造業、木曜のISM非製造業、そして金曜21:30の米雇用統計。9月16日のFOMC前に出る最後の主要データです。加えて水曜にはRBNZ(利上げ予想)とBOC(据え置き予想)が同じ日に、火曜にはユーロ圏CPIが2.9%→3.3%へ跳ねる予想。世界中の中銀が同時に「引き締め側」を向いている珍しい一週間です。
世界中のアナリストの分析をAIと一緒に集めて、通貨別の方向性を整理してみました。
| 発表 | 指標名 | 重要度 | 前回値 | 予想 | |
|---|---|---|---|---|---|
| ── 月曜(8/31)── | |||||
| ── 火曜(9/1)── | |||||
| 18:00 | ![]() |
消費者物価指数【速報値】 | ◎ | +2.9% | +3.3% |
| 18:00 | ![]() |
消費者物価指数【速報値】【コア】 | ◎ | +2.5% | +2.5% |
| 23:00 | ![]() |
ISM製造業景況指数 | S | 55.6 | 55.1 |
| 23:00 | ![]() |
JOLTS求人 | AA | 7359千件 | 7313千件 |
| ── 水曜(9/2)── | |||||
| 10:30 | ![]() |
第2四半期GDP [前期比/前年比] | ◎ | +0.3% | +0.3% |
| 11:00 | ![]() |
RBNZ政策金利&声明発表 | ◎ | 25bp 利上げ 2.50% | 25bp 利上げ 2.75% |
| 21:15 | ![]() |
ADP雇用統計 | AA | +4.4万人 | +4.5万人 |
| 22:45 | ![]() |
BOC政策金利&声明発表 | ◎ | 2.25%据え置き | 2.25%据え置き |
| ── 木曜(9/3)── | |||||
| 10:30 | ![]() |
貿易収支 | ◎ | +19.29億 | +13.75億 |
| 21:30 | ![]() |
新規失業保険申請件数 | AA | 20.3万件 | 20.5万件 |
| 21:30 | ![]() |
貿易収支 | A | -733億 | -896億 |
| 23:00 | ![]() |
ISM非製造業景況指数 | S | 54.1 | 54.1 |
| ── 金曜(9/4)── | |||||
| 21:30 | ![]() |
失業率 | ◎ | 6.4% | 6.4% |
| 21:30 | ![]() |
雇用ネット変化 | ◎ | +7.51万人 | +1.75万人 |
| 21:30 | ![]() |
雇用統計:非農業部門雇用者数 | SS | -2.3万人 | +5.8万人 |
| 21:30 | ![]() |
失業率 | SS | 4.1% | 4.1% |
| 21:30 | ![]() |
製造業雇用者数 | SS | +0.5万人 | +0.5万人 |
| 21:30 | ![]() |
平均時給[前月比/前年比] | SS | +0.1% | +0.3% |
※重要度は羊飼いのFXブログの指標ランクを参考に表記
※コンセンサスはkissfx.com、Trading Economics等から取得
※A以下の米国指標・○以下のその他指標は省略(そのため月曜は行がありません)
| 注目度 | 発言者 | 予定(JST) | 注目ポイント |
|---|---|---|---|
| ★★★ | ブレマンRBNZ総裁(記者会見) | 9/2(水)12:00 | 11:00の政策金利発表とセット。25bp利上げ(2.75%)はほぼ決まりなので、勝負は同時公表の金融政策報告が示す「この先の金利の道筋」。年末3.0%超を示唆できるか |
| ★★★ | マックレムBOC総裁(記者会見) | 9/2(水)23:30 | 22:45の据え置き発表を受けて。米加の関税戦争が9/8のカナダ側報復関税で次の段階に入る直前だけに、通商リスクをどう語るかがカナダドルを動かす |
| ★★★ | ベイリーBOE総裁 | 9/4(金)17:50 | 今週唯一の英国材料。米雇用統計の3時間40分前という絶妙な時間。原油高で英インフレが下がりきらない中、9月会合に向けたトーンが出るか |
| ★★ | ウォーラーFRB理事(投票権あり) | 9/3(木)21:30 | ISM非製造業の1時間半前。ウォーシュ議長の講演を理事がどう補強するかで、利上げ確率の56〜57%が動く。今週のFRB発言では最重要 |
| ★★ | バーFRB理事(投票権あり) | 9/1(火)22:05 | ISM製造業の55分前。ジャクソンホール後の最初のFRB高官発言で、市場が「議長だけの話か、FRB全体の話か」を測りに行く |
| ★★ | 高田日銀審議委員(あいさつ+記者会見) | 9/2(水)10:30〜 | 9/18の日銀会合の前。市場は9月利上げを約87%まで見込んでおり(ActionForex)、審議委員から追認の言葉が出るかで円の反応が変わる |
★★★ = 中央銀行トップ(FRB議長、ECB総裁、BOJ総裁、BOE総裁、RBA総裁など)。発言だけで相場が動くレベル
★★ = FRB副議長、投票権ありの地区連銀総裁、中銀副総裁クラス。政策に直接影響力がある人
★ = 投票権なしの地区連銀総裁、その他の中銀メンバー。参考程度だがチェック推奨
※発言の時間は変更される場合があります
今週は中銀トップの記者会見が水曜だけで2本(RBNZ・BOC)、加えて金曜にBOE総裁と、言葉のイベントが多い週です。ECBラガルド総裁とFRBウォーシュ議長の講演予定は今週はありません(確認済み)。ECBは9/10、FOMCは9/16、日銀は9/18と、来週以降に会合が集中しています。
ウォーシュ議長「インフレは目標を上回ったまま」。利上げ確率が36%→57%へ跳ねた
8/28のジャクソンホール基調講演で、ウォーシュFRB議長はPCEインフレが3.7%と2%目標を大きく上回っている状況を挙げ、「基調のインフレが明確かつ十分な速さで目標に向かうという確信が要る。そうでなければ我々にはやるべき仕事がある」と述べました(FRB公式・講演原文)。就任後はじめて、利上げの可能性を認めたに等しい言い方です。あわせてフォワードガイダンス(将来の政策方針を前もって示す手法)の廃止も宣言しました。これは今週以降ずっと効いてくる話で、「FRBが先に道筋を教えてくれる」前提が消えた分、1本1本の経済指標に相場が過剰反応しやすくなります。市場は即座に反応し、9月FOMCの利上げ確率は36%→56〜57%、12月までなら80%へ(Kitco)。ドル指数は+0.61%で2週間ぶり高値、ゴールドは-3%超という素直な形で終わりました。
先週のドルは主要通貨すべてに勝って最強。最弱はカナダドル
先週(8/24〜28)のドルは他の主要通貨すべてに対して上昇し、G10最強で引けました。当ブログの通貨強弱指数でもUSDが週間+48.4で1位、AUDが+25.2で2位、NZDが-19.1で最下位です。動きの大半は金曜1日に集中していて、ウォーシュ講演がそのまま週の結果を決めた形でした。あわせて労働省が3月までの雇用者数の年次改定を公表し、これがFRBの見方の再評価を後押ししたとKitcoは整理しています。
ぼんやり検索で拾った補足を2つ。ひとつはカナダドルが最弱だった理由が指標ではなく通商だったこと──米加交渉が決裂し、米国は自動車・トラック・部品・鉄鋼への関税を2027年1月1日から50%へ引き上げると表明、カナダのカーニー首相は9/8から報復関税を発動すると応じました(Trading Economics)。つまり今週の水曜BOCは「関税戦争の次の段階の1週間前」に開かれます。もうひとつは週の入り口の材料がイランだったこと。米国のイラン向け制裁発表で原油とホルムズ海峡リスクが再燃し、月曜のドル高(+8.4)はこちらが効いていました。ドル高の理由が週の前半と後半で入れ替わっていた点は、今週の値動きを読むときも頭に置いておきたいところです。
ホルムズ海峡は閉じたまま、ブレントは80〜90ドルのレンジ。原油高は今回「金の逆風」側に回りやすい
米国・イスラエルとイランの軍事衝突を受けたホルムズ海峡の事実上の閉鎖は解けておらず、再開の見通しも立っていません。世界の製油能力の約1割が停止したまま、紅海ではフーシ派の攻撃も続いています。一方でOPEC+の増産が供給を押し戻しており、ゴールドマン・サックスはブレントを80〜90ドルのレンジと予想、シティは第3四半期の見通しを75ドル→80ドルへ引き上げました。ここで効き方が2通りある点に注意が必要です。①緊張の再燃→安全資産としての金買い(直接の経路)と、②原油高→インフレ圧力→FRBの利上げ観測を支える→金利上昇→無利子のゴールドが売られる(金利の経路)。今週はウォーシュ講演でFRBが利上げ側に傾いた直後なので、②の経路のほうが効きやすい状況です。カナダドルにとっては原油高が数少ない支えですが、関税ニュースの重さのほうが勝っています。
ゴールドは$4,445〜4,456へ急落。$4,600の高値からわずか1週間で節目の200日線を試す形に
ゴールドは8/21時点で$4,600台の高値を更新していましたが、ウォーシュ講演で流れが変わり、8/28は一時$4,456(-3.14%)、Kitcoの週次サーベイでは$4,445という水準も伝えられました。FXStreetは200日移動平均の$4,530付近を通過点として挙げており、そこを下に抜けて週を終えた計算になります。銀はさらに大きく-4.24%。ただしアナリストの見方は割れています──Kitcoの週次サーベイでは市場アナリストの66%、個人投資家の50%が今週の上昇を予想しており、「急落したぶん戻る」という見方が多数派です。この強気派と、金利の経路から見た弱気の見立てのどちらが勝つかは、金曜の米雇用統計でほぼ決まります。
海外アナリスト(ING Think、FXStreet、ActionForex、Kitco News、ゴールドマン・サックス、Capital Street FX、Continuum Economics、ASB・BNZ)と、国内ソース(羊飼いのFXブログ取材記事の神田卓也氏・西原宏一氏、外為どっとコム、財務省発表)の見解をミックスして整理しました。
今週の「市場が織り込んでいる方向」(各バッジの前提。すべて今週時点のソースで確認)
FRB(9/16)=利上げ56〜57%(Kitco・Barchart)/ECB(9/10)=利上げ79%(Orbex)/日銀(9/18)=利上げ約87%(ActionForex)/RBNZ(9/2)=利上げ94%(investingLive)/BOC(9/2)=据え置き(Continuum Economics)/RBA(9/28-29)=利上げ約50%(Trading Economics)。主要中銀のほとんどが「利下げ」ではなく「利上げ」を見込まれている、かなり珍しい週です。
USD 米ドル↑ やや強気
JPY 日本円→ 中立(介入とドル高の綱引き)介入警戒:高。財務省は7/30〜8/26に総額15兆3993億円という過去最大の円買い介入を実施したと8/28に公表しました(時事通信・日本経済新聞)。7/31には15年ぶりの日米協調介入も行われ、片山財務相は「さらなる協調介入もちゅうちょしない」と明言、米財務省も「引き続き緊密に連絡を取り、追加の共同介入をためらわない」と声明を出しています(財務省英文声明・CNBC)。160円接近では実弾を想定すべき状況です。今週レートチェック報道は確認されていませんが、けん制の語気は「あらゆる手段」級のまま維持されています。逆に振れるとしたら:円高側は介入か日銀のタカ派サプライズ、円安側は米NFPが上振れて160円を明確に抜けた場合で、そのときは162円・介入前の164円が視野に入ります。
EUR ユーロ→ 中立
GBP ポンド↓ やや弱気
AUD 豪ドル↑ やや強気
NZD ニュージーランドドル↑ やや強気
CAD カナダドル↓ やや弱気ただし、ここは意見が割れている点を正直に書いておきます。Kitcoの週次サーベイでは市場アナリストの66%、個人投資家の50%が今週の上昇を予想しており、多数派はむしろ強気です。それでも弱気に置いたのは、彼らの強気が主に「3%以上下げたぶんの反発」を根拠にしているのに対し、下げの理由になった金利の見立てのほうは何も変わっていないからです。逆に振れるとしたら:金曜のNFPが下振れ(前回は-2.3万人のマイナス)て利上げ観測が崩れた場合で、8/7の再現になれば$4,600方向へ一気に戻ります。この1点だけで、今週の見立ては簡単にひっくり返ります。
なお当ブログは先週このゴールドを「やや強気」として外しました(-3.47%)。議長講演というイベントがあることは書いていたのに、タカ派に振れた場合の逆側を判断に入れていなかったのが原因です。今週は両方向を書いたうえで、金利の経路を採っています。
今週の主役は金曜21:30の米雇用統計(8月分)です。ふだんから最重要の指標ですが、今回は事情がひとつ違います。9月16日のFOMCの前に出る、最後の主要データだからです。
数字を並べると分かりやすくなります。
- 非農業部門雇用者数:予想+5.8万人/前回-2.3万人
- 失業率:予想 4.1%/前回 4.1%
- 平均時給:予想 +0.3%/前回 +0.1%
ポイントは前回がマイナスだったことです。7月分(8/7発表)が大きく下振れしたとき、9月利上げの見込みは1週間で63%から36%まで崩れ、ドルは売られ、ゴールドは買われました。つまり市場は「米国の雇用は本当に利上げに耐えられるのか」を一度疑った経験があるのです。
そのうえで先週、ウォーシュ議長が「インフレが鈍らないならやるべき仕事がある」と言い、市場は利上げ確率を57%まで戻しました。今週の雇用統計は、その戻した57%が正しかったかどうかを判定する試験になります。
なぜ意見が割れるのか。雇用の数字には、いま2つの読み方が同時に成り立つからです。①雇用が伸びる=景気が強い=インフレが続く=利上げできる、という読み方。②雇用が伸びない=景気が弱い=利上げしたら壊れる、という読み方。ふつうの年なら「雇用が強い=その国の通貨が買われる」で話は終わりますが、今回はFRBが利上げを検討しているぶん、②の心配が現実味を持っています。前回がマイナスだったことで、この心配は数字の裏づけを持ってしまいました。
さらに今回は、ウォーシュ議長がフォワードガイダンスの廃止を宣言した後の最初の雇用統計でもあります。「FRBが先に方向を教えてくれる」という緩衝材が外れたぶん、数字そのものへの反応が普段より大きくなりやすいと考えておくのが安全です。
今週の各アナリストの分析と直近のニュースをAIに読み込ませて、総合判断を聞いてみました。
AUD>
NZD>
EUR≒
JPY>
GBP>
CAD
今週は「FRBは本当に利上げするのか」を市場が採点する一週間です。先週のウォーシュ議長のジャクソンホール講演で利上げの見込みは36%→57%へ戻りましたが、その答え合わせが火曜・木曜のISMと金曜21:30の米雇用統計で行われます。前回がマイナスだっただけに、上にも下にも大きく振れる余地があります。水曜にはRBNZ(利上げ予想)とBOC(据え置き予想)が同じ日に、火曜にはユーロ圏CPIが3.3%へ跳ねる予想と、世界中の中銀が同時に引き締め側を向いている珍しい週。ドル円は160円の手前で過去最大15.4兆円の介入をやり切った当局と向き合う形で、介入警戒は高いままです。
▶ 来週の注目:9/7週はいよいよ会合ラッシュの入り口。9/8にカナダの報復関税が発動し、9/10にECB理事会(利上げ予想)、そしてその翌週には9/16のFOMCと9/18の日銀会合が控えます。今週の雇用統計の結果を受けて、各通貨の織り込みがどう変わったかの整理からお届けする予定です。
※指標の重要度ランクは羊飼いのFXブログ(kissfx.com)の指標ランクを参考にしています。

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